高齢者が狙われる犯罪の実態と家族が一緒に取り組む防犯対策

「うちの親は頭がしっかりしているから大丈夫」という油断が最も危険です。特殊詐欺の被害者の6割以上が65歳以上の高齢者であり、認知機能に問題がない方でも巧妙な手口に騙されるケースが多数報告されています。高齢者が狙われる犯罪の実態を知り、家族全員で対策を取ることが重要です。

高齢者が狙われる4つの理由

① 自宅にいる時間が長い

退職後・介護中の高齢者は自宅にいる時間が長く、電話や訪問販売員の接触機会が増えます。日中に電話がつながりやすい・訪問を受け入れやすい状況が犯罪者の接触を容易にします。

② 資産を持っている

長年の蓄えがある高齢者は犯罪者にとって「高額の被害を狙える標的」です。「老後の蓄え」「退職金」などの資産を持っているケースが多いことが知られており、特に特殊詐欺の被害者は高齢者に集中しています。

③ 一人で判断・決断しやすい

同居家族がいない・子どもが遠方に住んでいる高齢者は、不審な電話・訪問に対して相談せずに一人で判断・対処しようとするケースがあります。犯罪者はこの「一人での判断」を誘導するために「家族に言わないで」「今すぐ決めてください」という言葉を使います。

④ 人を疑いにくい傾向

高齢世代には「人を疑わず誠実に対応する」という美徳の意識を持つ方が多くいます。犯罪者はその誠実さを逆手に取り、「信頼関係を作ってから」金銭を要求します。

高齢者が被害に遭いやすい犯罪の種類

特殊詐欺(オレオレ詐欺・ニセ警察官詐欺・還付金詐欺)

警察庁の統計によると、2024年の特殊詐欺被害者のうち65歳以上が65.4%を占めています。被害額約717〜722億円のうち大部分が高齢者からだまし取られたものです。

特に急増しているのが「ニセ警察官詐欺」です。「あなたの口座が犯罪に使われています」「逮捕状が出ています」と電話し、「口座の資産を保護するために現金を渡してください」と誘導します。警察官を装い、SNS・ビデオ通話で偽の警察手帳を見せる手口も増えています。

還付金詐欺では「医療費・税金の払い戻しがある」とATMに誘導し、操作させることで振り込みをさせます。被害者の87%が65歳以上です。ATMで還付金が受け取れる制度は存在しません。

悪質訪問販売・点検商法

「屋根の無料点検をします」「水道の点検に来ました」と訪問し、必要のない工事・高額な商品を売りつける手口が各地で報告されています。「今日中に決めないと工事できない」「見てみたら大変なことになっていた」と不安をあおる言葉を使い、冷静な判断を奪います。

クーリングオフ(訪問販売などで契約後8日以内であれば無条件で解約できる制度)の存在を知らない高齢者が多く、被害が拡大する傾向があります。

空き巣・住居侵入

日中独居の高齢者の家は、外出したタイミングで侵入される可能性があります。「認知症で外出したまま帰れなかった間に家に入られた」という事案も報告されており、介護が必要な高齢者がいる家庭では防犯カメラ・センサーアラームの設置が有効です。

訪問窃盗(居空き・忍び込み)

庭仕事・買い物中に「ちょっとの間だから鍵はいい」という状況を狙う「居空き」被害も高齢者に多い手口です。短時間の外出でも必ず施錠することが重要です。

家族で取り組む防犯対策

① 「お金の話が出たらすぐ電話して」を合言葉に

離れて暮らす親への最も効果的な対策は「お金・口座・カードの話が電話でされたら、すぐに電話を切って子どもに連絡する」というルールを事前に決めておくことです。「あなたの息子さんから聞いた」という電話が来ても、必ず自分の知っている番号に折り返すよう伝えてください。

② 固定電話への迷惑電話対策機器の設置

「この通話は録音されます」と自動アナウンスする機器や、指定外の番号からの着信をブロックする機器が数千円〜で市販されています。録音されると知った詐欺師が電話を切るケースも多くあります。多くの市区町村が高齢者向けに迷惑電話対策機器の設置補助金を提供していますので、お住まいの自治体窓口に確認してください。

③ 家族間の定期的な連絡

週1〜2回の定期的な電話・ビデオ通話で「最近変な電話はなかったか」「おかしな訪問者はいなかったか」を確認する習慣をつけることが重要です。家族との日常的なコミュニケーションが「一人で判断させない」環境を作ります。

④ 訪問者への対応ルールを決める

事前に連絡のない訪問者は玄関を開けずにインターホンで対応すること、工事・点検を名乗る業者が来た場合は「家族に確認します」と言ってすぐに決断しないことをルールとして伝えてください。「今日中に決めないと工事できない」という業者は悪質業者と判断して構いません。

⑤ 見守りカメラ・IoT機器の活用

親の自宅に見守りカメラを設置することで、外出先から自宅の状況を確認できます。玄関へのカメラ設置で来訪者を子ども・孫のスマートフォンで確認できる体制を整えられます。不審な訪問者が来た際に遠隔から「今は対応できません」と伝えることも可能なモデルもあります。

金融機関・地域の見守りを活用する

銀行・郵便局の窓口では、高齢者が高額の現金を引き出そうとした際に「誰かに勧められましたか?」と声をかける取り組みが進んでいます。「急いで大金を引き出さなければいけない」という状況が発生した場合は、窓口のスタッフに相談してみてください。

地域の民生委員・社会福祉協議会・地域包括支援センターも高齢者の見守りに関わっており、相談窓口を活用することで専門的なアドバイスを受けられます。

※参考:警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の情勢」(https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2024.pdf) ※参考:消費者庁「特定商取引に関する法律」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/)

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